広島高等裁判所 昭和37年(く)22号 決定 1962年7月19日
少年 S(昭二二・一二・五生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は記録編綴の附添人弁護士椎木緑司名義の抗告理由書記載のとおりであるからこれを引用する。
これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
第一点法令違反の論旨
しかし少年法第三条第一項第三号に謂う次に掲げる事由がある場合とは同号に掲げるイ乃至ニの内いづれか一つの要件を具備するをもつて足り、そのすべての要件を具備する場合であることを要しないものと解すべきところ、これを要するとの見解に立つて原決定を非難する所論はその前提を誤つているものであるから採ることを得ない。原決定の理由をみれば非行事実の1、3は同号ニに、2はやや明瞭を欠くけれども同号イ及びハに該当するものとなしていることが窺われるから、原決定には所論法令の違反は存しない。論旨は理由がない。
第二点事実誤認の論旨
非行事実1 それが強姦罪を構成しないとしても、その非行の手口態様少年、被害者、関係人等の年齢身分等を考慮すれば、それが少年自身又は他人の徳性を害する行為であることは明白である。
非行事実2 少年が原決定摘示のとおり無断家出をなして徳山市に立廻り不良徒輩である○本幸○等と交遊していたことは証拠上明らかで、該事実が前同号イ及びハに該当することも明白である。
非行事実3 その非行の手口態様、少年、被害者の年齢身分等を考慮すれば、それが少年自身又は他人の徳性を害する行為であることも明白であり、少年にかかる行為をする性癖のあることも充分認められる。
結局原決定には所論のごとき事実の誤認はなく、従つて論旨は理由がない。
第三点処分に著しい不当があるとの論旨
しかし少年の非行歴、本件非行、その原決定摘示のごとき資質等を考慮すれば、少年の非行性も相当程度亢進していて将来罪を犯し又は刑罰法令に触れる行為をなす虞が多分に存するものとみられ、一方少年の家庭は原決定摘示のとおり保護能力を有せず、少年を家庭に復帰させてもその教育補導は到底これを期し難いのであつて、少年をこの際施設に収容して教育を施し規律ある生活に馴致しその性格の矯正をはかることこそ最も適切な措置であると思料されるのである。
してみれば、諸般の事情を勘案して少年を初等少年院に送致することとした原決定は、その処遇において相当であつて著しい不当は存しない。従つて論旨は理由がない。
そこで少年法第三三条第一項後段少年審判規則第五〇条を適用して本件抗告を棄却することとする。
よつて主文のとおり決定する。
(裁判長判事 村木友市 判事 幸田輝治 判事 藤田吉備彦)